平成23年度の第2次税制改正が平成23年12月2日に公布され、法人税率が引き下げられると共に、復興財源確保法により復興特別法人税が創設されました。
法人税率の引き下げは平成24年4月1日以降開始する事業年度から、復興特別法人税は平成24年4月1日以降開始する事業年度から3年間適用されます。
(1)法人税率
改正前 | 改正後 | |||
所得金額年 800万円超 |
所得金額年 800万円以下 |
所得金額年 800万円超 |
所得金額年 800万円以下 |
|
普通法人 | 30% | 25.5% | ||
中小法人 | 30% | 22%(18%) | 25.5% | 19%(15%) |
( )内の改正前の税率は平成23年3月31日までに開始し平成24年4月1日以後に終了する事業年度、( )内の改正後の税率は平成24年4月1日から平成27年3月31日までに開始する事業年度に適用されます。
(2)復興特別法人税
その年度の一定の法人税額の10%相当額が付加されます。
(3)税効果会計への影響
平成24年3月31日まで |
平成24年4月 1日から 平成27年3月31日まで |
平成27年4月1日以降 | |
実行税率 | 40.69% | 38.01% | 35.64% |
平成23年度の税制改正において減価償却制度が見直され、現在適用されている「250%定率法」が「200%定率法」に引き下げられました。「200%定率法」とは、定率法の償却率を定額法の償却率(1/耐用年数)の2.0倍(200%)に設定して計算する方法です。償却率2.5倍が2.0倍に引き下げられれば、これまでより償却スピードが鈍ることになります。
200%定率法は平成24年4月1日以後取得分の減価償却資産について適用されます。3月以外の決算法人においては、4月1日前に取得したか、後に取得したかによって償却計算に違いが生じてしまいます。したがって会計システムの対応や事務負担なども考慮されて、次の2つの経過措置が設けられました。
(1) 平成24年4月1日以前に開始して平成24年4月1日以降終了する事業年度について、その末日までに取得した減価償却資産については改正前の250%定率法により償却できる。
(2) 現在250%定率法を適用している減価償却資産については250%償却を継続することができるが、既存の減価償却資産について200%定率法に変更した場合においても、平成24年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届け出ることによって、当初の耐用年数で償却を終了できる。(具体的方法は今後明らかにされる)
上記(2)の経過措置は、既存の取得資産について、新規取得資産との間の償却方法を同一にするための手当ですが、その適用開始時期は、4月1日をまたぐ事業年度か、4月1日以後最初に開始する事業年度、のいずれかを選択することとされています。
例えば、3月決算法人では、平成24年4月1日の帳簿価額を取得価額として、残余の耐用年数により200%定率法を適用することができるという経過措置です。
減価償却制度の「250%定率法」が平成24年4月から「200%定率法」への続きの記事を読む
申告書の提出期限後に記載内容に誤りがあり、納め過ぎの税金がある場合や還付金額が少なすぎた場合等に、税務署に訂正を求めることを、「更正の請求」いいます。この更正の請求ができる期間が原則として申告期限から1年とされていました。
2011年度税制改正において、更正の請求期限が5年に延長されました。
従来は1年を過ぎた場合に納税者側からは税金の取り戻しを行う事ができず、税務署長に「嘆願」という方法で税務署側から減額更正をしていただくやり方が実務的には行われていました。しかしこの方法で税金の取り戻しが確実にできるわけではありませんでした。
また、税務署が増額更正できる期間も今までは3年とされていた所得税などについて5年に延長され、課税バランスが図られました。
この更正の請求の延長については、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。
またこの改正を踏まえ、平成23年12月2日以前に法定申告期限が到来する国税で、更正の請求期限を過ぎたものについては「更正の申出書」の提出があれば調査によりその内容を検討して、納め過ぎの税金があると認められれば減額の更正により還付が可能になりました。
納税者にとっては有利な税制改正が成立しました。適用に当たっては「事実を証明する書類」の添付が必要となりましたのでお忘れなく。
大王製紙前会長が会社から100億円超の資金を借り入れていたことがわかり、巨額な融資についての捜査が進められていることが報じられています。大会社においては経営と資本が分離されていますので、会社と役員の取引は利益相反しますので、厳格なル-ルのもとで通常は排除されます。
一方、中小企業、特に同族会社においては役員への貸付を行うことが少なからず行われます。取締役会の決議を経て金銭消費貸借契約によって適切に実施される貸付や仮払金や立替金を貸付金として振替処理されたものなどがあります。そのため役員貸付金を計上した場合の留意事項について考えてみました。
税務上の留意点
会社が役員に貸付をした場合には、必ず利息を計上する必要があります。株式会社は営利を目的としていますので無利息で資金を貸す行為はおかしいと考えられています。
では、どれくらいの金利の利息を計上すればいいのか、所得税基本通達では次のように定めています。
その貸付が会社が他から借入れて貸し付けたものであることが明らかである場合には、その借入金の金利により、その他の場合には貸付を受けた日の属する年の前年の11月30日を経過する時におけるいわゆる公定歩合に年4%を加算した利率によることとされています。
金融機関からの評価に対する留意店
銀行融資を受けるにあったっては資金使途が何かを求められますが、会社の財務諸表に役員貸付金が計上されている場合、会社の運転資金として調達したにも関わらず、社長個人の資金として使われているのではないかと疑われ厳しい指摘をされることがあります。迂回融資といって会社で調達した資金を役員個人や取引先に貸付けを行っているなどは不正融資につながりますので、決算時には役員との貸借は精算いたしましょう。
長期間返済が行われずに滞っている役員貸付金は、キャッシュインがなく財産価値がないものと見られてしまいますので、返済条件を定めて契約書を作成し定期的に返済を行ってください。
個人事業を新たに設立した法人へ移行させることを法人成りと言いますが、この場合、資本金1,000万円未満の法人については、設立から2期間は消費税の免税事業者となりますので、消費税の課税はありません。これは法人成りする場合の大きなメリットです。
売上高が1000万円以上の個人事業を行っていた場合は消費税は課税されています。この個人事業を法人化した場合、個人事業は廃業となり、法人として新たに開業することとなります。消費税は前々事業年度の売上高が1,000万円以上であるかどうかによって課税事業者か、免税事業者かを判定するため、前々事業年度が存在しない新たな法人については、2期間について免税扱いとなるのです。
しかし、23年度税制改正において、第1期目の事業年度の6ケ月間の売上高が1,000万円を超える場合は、2期目は消費税の免税事業者とはならないことに改正されました。なお同期間で給与の支払額が1,000万円未満なら免税事業者になれます。
この改正は平成25年1月1日以降に開始する事業年度から適用されますので、個人事業から法人成りを検討されている方、また新規に会社設立を検討されている方は23年度中に会社設立されることを検討してはいかがでしょう。
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